日本動物リハビリテーション学会は2007年11月に、徳力幹彦先生を初代会長として研究会の形で発足しました。2010年には発展的に日本動物リハビリテーション学会へと改組して今日に至っています。
それまで日本の動物医療は正確な診断や手術等の治療が行われていたとしても、元の生活に戻す十分な管理が配慮されていたとは言えない状態にありました。気がついてみると問題が再発していたり、かえって悪化させているような事例もありました(私事ですが)。
人の医療に目を向けてみると既にリハビリテーションが盛んに行われ、大きな成果をあげていることを知り、飼育動物に対するリハビリテーションの必要性を強く感じました。
当初徳力会長は学会の基盤作りと研究を支援する目的で、毎年ヨーロッパやアメリカから、動物リハビリテーションの先駆者を、また国内から人のリハビリテーションに関係する専門家を招き、講習会や実習が行われました。こうして我が国の医療行為としての動物リハビリテーションが手探りの中で始まりました。
10余年の活動を通じて神経学者の徳力先生は「現時点で動物のリハビリテーションを他の医学的研究と同じ手法で扱うことは難しい、今しばらくは臨床家がその経験を生かしながら、リハビリテーション臨床を構築する研究を進める必要がある」と提案され、後進にその任を託されました。
2019年、令和元年8月、第17回日本動物リハビリテーション学会年次大会総会が開催され、総会にて徳力先生の意を繋ぐ形で小林孝之が第2代会長を拝命しました。
私はこれまで臨床獣医師、骨の研究者、整形外科医、リハビリテーション獣医師として活動してきました。
これらの経験から動物のリハビリテーションは獣医師と動物看護師だけで成立つものではなく、人のそれと同じように、獣医師を中心として様々な専門家の力を借りて行われる、チーム医療が目指す方向であると確信いたしました。
新しく選出された当学会の理事は現時点で最もアクティブに活動される先生方です。そのため様々な意見や提案をいただくことができます。
また国内外、多くの専門家との交流から新しい知見を得て、次に何をすべきかの方向性が見えています。
これまでの活動から私の役割は裏付けを持つ、信頼される動物リハビリテーションを構築して行くことにあると考え、学会活動を通じて関係する研究支援を行ってまいります。また現時点では非常に難しい問題ですが、リハビリテーション医療に参加する人たちが専門的な知識技術を持つことを公に示すことができる仕組み作りも大切と考えています。
また一定の水準を持つ施設を研修施設として認定することも必要です。改めて皆様の力をお借りしたく存じます。ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
日本動物リハビリテーション学会 会長 小林孝之