日本動物リハビリテーション学会
日本動物リハビリテーション学会
日本動物リハビリテーション研究会設立趣意書
 伴侶動物が、家族の一員となり、かけがえのない存在となってきていることから、伴侶動物の医療に対する飼い主の考え方および期待も大きく変わりつつあり、自分自身が受けたい医療を我々に求めるようになっている。そして、各動物病院は、複数のスタッフと高価な機器を揃えてこのような飼い主の要望に対応してきているといえよう。さらに、動物病院によってはそれぞれの専門性を打ち出すことで、高度化する飼い主の要望に答えようとする気運も高まっている。しかし、手術後の動物、高齢動物、特定の疾患を持つ動物など、一定の診断・治療が実施された動物に対しても、飼い主は今まで以上により快適な状態に回復させたいという願いを持ち、動物病院にこの期待を寄せてくるが、残念ながら、現在の日本では基本的にこの需要を満たす準備ができていない。

 欧米では、医学を見習って動物のリハビリテーションやホリスティック医療などが発展してきており、この需要に答える体制が整って来ている。この需要は大変大きなもので、特にリハビリテーションの分野では獣医師がその患者の病態を把握評価すると、動物看護師のみならず動物理学療法士として資格を得ている人々により提供される新たな医療環境が構築されている。リハビリテーションで行われる治療は多くの時間と手間がかかるが、この治療によって機能の低下した筋肉、靱帯、関節は非常に効果的かつ速やかに回復し、総合的に患者のQOL改善に貢献している。また、これらの治療に対する研究も進み、データの裏付けのある治療も実施されて来ている。

 日本でも動物のリハビリテーションの必要性・重要性は多くの関係者が認識しているが、機器を導入すればよいと簡単に考えられている場合も多々見受けられる。しかし、動物リハビリテーションは本質的には獣医療行為であり、獣医師による的確な診断と治療方針の確立に基づき、動物看護師、理学療法士、針灸師などがそれぞれの立場で動物リハビリテーション療法に参加していかなければならない。また、この分野には飼い主自身が主体性をもって参加することもでき、獣医師と飼い主との間で一段と深いコミュニケーションが可能になるという大きな利点も存在する。  日本ではまだ法的な整備が追いついていないが、獣医師は動物リハビリテーションの全体に責任を持つとともに、動物リハビリテーションに必要な人材を集め、日本における動物リハビリテーションのシステムを構築していく責任がある。

 そこで、今回、欧米の動物リハビリテーション関係者との情報交換の場を保ちながら、日本における動物リハビリテーションの普及ならびに研究の進展に貢献し、社会に広く貢献する目的で、多くの獣医師が参加可能な日本動物リハビリテーション研究会の設立を計ることにした。